1. イタリア旅行サッカー観戦記 | 天空のミラノ
    異国の地でのサッカー観戦を通じて、サポーターの絆は強くなっていく。それはいつまでもいつまでも続くと思っている。





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    第24話 ミラノの朝-2
     想像以上にスムーズに俺に新聞を渡してくれる。もう少し試行錯誤するかと思っていたが肩すかしを食らう。
     彼は新聞を渡すと店の奥にあるカウンターの向こうへと下がる。俺は先日の値段と同じ1ユーロ札と0.2ユーロを硬貨で差し出す。
     しかし新聞をみると0.9ユーロの文字が目に入る。
     渡す金額を間違えてしまった事に「まずい!」と思う。
     チップとして取られてしまう、とか、計算間違えで返ってこないと恐れる。レジを見ていると1.2ユーロはしっかりと納められてしまい、計算機を使ってお釣りを計算している。 するとちゃんと0.3ユーロをお釣りが返ってくる。
    「グラツィエ。」
     俺はそうお礼を言うと店を出る。しかし不思議である。最初から0.2ユーロ硬貨を返し、1ユーロ札で計算すれば特に計算機などいらず暗算でできるものである。 
     朝靄の中をホテルへと向かい歩き、トラムの線路を横切る。
     ホテルへ辿り着くと山本さんが朝食を摂っているかと思い、1階のバイキングを覗くがそれらしき人はいない。
     仕方なく、自分の部屋へ一度帰り、テレビを付ける。見慣れないアニメがやっている。暫くそれを眺めていると、30分が過ぎる。
     幾らかお腹が空き、1階へ下りていき朝食を摂る事にする。
     昨日の朝食もそうだったが、ハムとチーズとジャム入りのクロワッサンと珈琲。それにヨーグルトとフルーツ。和食が食べたいとは思わなかったが、何かバリエーションがないものかと思った。ただ話によると昼夜はしっかり食べるらしいが、朝は甘いパンとカプチーノで済ます事が多いらしい。これも文化である。
     何となく口に運ぶ朝食。
     すると山本さんが姿を現す。
    「おはようございます。」
    「おはよう。何時に起きたの?」
    「7時頃ですね。」
    「今までに何を?」
    「すぐ裏に本屋があり、そこで新聞を買ってました。」
    「私は昨晩は疲れ切って寝てしまい、朝になってようやくシャワーを浴びて起きてきたのよ。」
     そんな所から朝の会話は始まり、昨夜の試合の話しや、今日の天気の話しをする。
    「天気予報によると今日もイタリア全土で天気が良くないらしいですね。」
    「そうなのよね。サンシーロは屋根があったから良かったけど。」
    「ボローニャのスタジアムは屋根がないらしいですしね。」
    「そうよねぇ。」
    「それに試合が荒れる可能性もあるし、自分達もずぶ濡れで、更に冬の風が身体を冷やしちゃいますしね。」
    「そうそう、それが困るわよね。まぁ、何とかなるでしょうけど。」
     俺は昨年の冬、1月の事を思い出す。
     日本で真冬に6時間程の試合を観戦した事がある。
     国立競技場で行われた2003年のA3チャンピオンズカップである。
     昼過ぎから始まったその試合は、一時間の中断を挟んで2試合目が始まる。3人の仲間といたのだがその当時、雨は土砂降り、時に雪に変わったりした。
     1時間の中断期間には、スタンドから屋根のあるコンコースへ避難し、とにかく無言で堪え忍ぶ。
     唇は薄紫になり、吹き込む風に心内で文句をいいながら、そして二度と吹き込まない様に祈りながら、体を震わす。その時確かスタジアム内では何か踊るセレモニーの様なものをやっていたのだが、誰も好きこのんでそれを見る者はいなかった。何度2試合目を見るのを止めて帰ろうかと思った。しかし結局2試合見てしまう。我ながら誇るべき愚行である。
     試合開始前、ビールを飲んで体を温めようと思ったが全然利かなかった。酔わないのである。酒が回らない。
     効果が出たのは、驚くべき事に帰りの電車に乗って暖かい場所へやっとたどり着いた時に、急に酒が回ってきたのである。数時間前に飲んだアルコールが回る事があるものかと、びっくりした。そしてそれほど寒かった事を改めて実感した。
     山本さんはこんな話を聞いて、目を丸くしていた。
     しかし、「サッカーバカ」と言われる人種は不思議なもので、お互いの行動には目を丸くするクセに、いざその立場となると狂った行動をとってしまうのである。後で聞くと呆れ果てられる程の事を。
     しかしこのイタリアの地まで来てそんな寒修行に近いことをやらされるのは勘弁して欲しかった。近所の神社の神通力よ、この地まで通じてくれと祈ってしまう。
     そんな話しをしていると、高橋さんが姿を現す。

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    第25話 ボローニャ対ユベントス-1
     高橋さんの服装はしっかりしていたが、表情に疲れを癒して起きてきた感じが表れている。どこか元気なさげである。
     高橋さんに新聞を買ってきた話しをする。すると何処で買ったか?と尋ねられたので、ホテルの裏通りと答える。
     そうこうしている内に8時を過ぎている。
     今日は中田英寿の所属するボローニャとユベントスの試合を観戦予定である。ボローニャまでは往復バスであり、その出発は10時の予定であり、まだ時間はある。
     それぞれが食事を終え、高橋さんは本屋へ行くと言って消えていき、山本さんと俺は部屋へ戻る事にする。
     俺は部屋に戻るとベッドに寝ころび、新聞を広げる。新聞は1試合について1面から2面を割いている。日本では考えられない記事の多さである。
     サッカーの単語と数字と選手名から推測しながら読み進めていく。それだけで楽しい。
     サッカーが文化として根付いている国は違うなと驚嘆しながら、1ページ1ページをめくっていく。するともう9時を回っている。
     新聞をたたみ、俺は準備を始める。そしてロビーへと向かった。
     小林さんが案内を始めている。
    「バスがあちらの方に止まっているので、準備ができた方は乗車下さい。」
     高橋さん、小林さん、井関さんが集まっていたので、バスに乗って待ちましょうか?と話しをする。
     今日は井関さんの隣りに座る。そこで色々な話しをしながら未だ集合しない人達を待つ。
     9時50分、数十人が揃っている筈である。小林さんが人数を確認すると5人ほど足りない事を告げ、慌ただしくなる。点呼を取って、まだ来ていない人を割り出し、ホテルへと戻っていく。
     10時10分、2人が乗車してくる。そして25分になって3人が乗車してくる。何れも悪びれる様子もなく、席に着く。小林さんが戻ってきて、結局出発は30分遅れとなる。
     普通であれば「すいません」の一言があってもおかしくない。そんな良くない雰囲気が漂っている。しかし、そういった事はなく、出発する。
     俺はボローニャのユニフォームやマフラーなどのお土産を頼まれている。到着は試合開始2時間前に到着予定であり、余裕であった筈。しかし出発が30分遅れ、交通状況や、小林さんがスタジアムをよく知らないと言う事から、2時間がどれほど余裕のあるものなのかわからず、不安になる。
     小林さんとドライバーが何やら話しをしている。
    「ドライバーの話によると予定通りに着けるそうです。」
     小林さんはそう言い、そしてそこから昨日のダービーやニュースの内容などを簡単に話し始める。俺は聞き流しながらも安心する。
     そして一般道から高速道路に乗る頃、周囲から寝息が聞こえてくる。俺は暫く井関さんと話しをしていたが、2人ともいつの間にか睡魔に襲われている。
     ふと目覚めるとのどかなヨーロッパの田舎の風景が広がっている。青々とした牧草地帯の様に見える。するとそこで井関さんが話しかけてくる。
    「こんな田舎なら僕も住みたいっすね。」
     井関さんは風景を眺めている。俺は冗談めかして
    「イタリアの綺麗な女性と?」
     と言うと、彼は静かに笑う。 
     土地勘は全くないが、パルマを過ぎ、2時間が過ぎ、高速を降りてボローニャへと到着する。市街を走るバス。ミラノに比べるとかなりの田舎である。何と表現していいものかわからないが、時間がのんびりと過ぎている様に感じるし、人も殆ど見かけない。
     こうしてスタジアムへと向かっていく。

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